今回は「あの頃ペニーレインと」を取り上げたいと思います。私の家庭では、年末に家族が集まり、年越し番組を一緒に見るのが恒例です。しかし、兄が例の年越し某音楽番組を嫌っているため、毎年ナショナルジオグラフィックや映画を鑑賞しながら年を越すことになるんですよ。
昨年の年越し映画に選ばれたのは、「あの頃ペニーレインと」でした。私は初めて鑑賞したのですが、これがなかなかの傑作でした。
あらすじ
「あの頃ペニーレインと」(原題:Almost Famous)という邦題は、日本でも屈指の名翻訳として知られています。Almost Famous を直訳すると「有名になりそうな」という意味で、このタイトルが示すのは、まさにブレイク寸前のバンド Stillwater と彼らに密着取材する真面目で純朴なロックライター志望の少年ウィリアム、そしてグルーピーたちの物語です。
感想
邦題でバンドではなく「ペニーレイン」に焦点を当てるのは違うのではないか、とも思いましたが、主人公ウィリアムの視点から見れば、「ペニーレインと過ごしたバンドとの日々」を象徴する内容であり、この邦題はそのテーマを見事に表現していると言えるんじゃないかな。
俺だってそうさ。こんなタイプは女の扱いがヘタだ。だが偉大な芸術はここから生まれる。顔のいい男は根性なしでその芸術も長続きしない。 だが俺たちには頭脳がある。 偉大な芸術は、罪悪感や憧れから生まれ、セックスや愛が絡み合っている。
バンドに振り回されるウィリアムに先輩ジャーナリスト(レスター)が語ったアドバイス。彼の渋さがまたいい味出してました。
容姿がいいと中途半端に現実に満足しちゃって芸術に昇華しようという気にならない。いや、そんなの偏見か?(笑)
ドラッグやセックスに彩られたイケイケのロックバンドとその輝きを追い求めるグルーピーの女の子たち。そして、そんな世界とは対極に位置する、純朴でオタク気質な音楽評論家志望の少年ウィリアム。
特に笑ってしまったのが、ウィリアムの厳格な母親が、軽薄なノリのラッセルに「私の息子のキャリアに傷をつけたら許さない」と説教をたれるシーン。彼女は息子が弁護士になると信じて疑わないのですが、その真剣さに呆気にとられて真顔になるラッセルの姿が滑稽でした。
この物語は、純朴なウィリアムが大人の社会や現実(やや派手すぎますが)を知っていく成長の物語であると同時に、ラッセルをはじめとするクールで(時にクズな)登場人物たちが、自分自身を見つめ直していく再生の物語でもあります。人間の愚かさを愛おしく描き出した、まさに“人間賛歌”ともいえる作品です。
そして、飛行機が墜落しそうになるシーンでは、登場人物全員が自分の過ちや秘密を次々と告白する場面が。これがまた人間臭くて…。
印象的だったのは、グルーピーのペニーレインが通り過ぎる女子高生たちに中指を立てるシーン。同じ年頃の女子たちを目の当たりにし、「普通になれない自分」への劣等感や嫉妬が滲み出ているようで、思わず胸が締め付けられる切なさを感じました。
若い時って刹那的になっちゃうものなのかもしれない。私も幼い頃に親を亡くした影響か、小さい頃から人生は短いんだという認識が潜在意識レベルで染みついている。大学時代にはそんな衝動から、無鉄砲に地中海や黒海周辺を旅してみたり。若い頃特有の焦燥感というか、そういうものに人生を惑わされるのもたまには悪くないかもしれなけど、祭りの後は自分自身を振り返るのも大切。
あの頃ペニーレインと
【日本公開日】2001年3月17日
【製作国】アメリカ【上映時間】123分
【監督】キャメロン・クロウ
【出演】パトリック・フュジット, ケイト・ハドソン, ビリー・クラダップ, フランシス・マクドーマンド, ジェイソン・リー, アンナ・パキン, フェアルーザ・バーク, ノア・テイラー, ゾーイ・デシャネル, アニタ・ミラー, フィリップ・シーモア・ホフマン
笑いあり、感動あり
20半ばの映画好きのイラストレーター
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